先日G退治をした。何故か私の家には今までスプレー式殺虫缶という文明の利器が存在しなかったのだが、今夏、ついに導入を果たしたのである。
 結果として、それは大変使い勝手の良いものであった。私は自らの手を汚さずして、その生々しい焦茶色の太古からの生命がぴくぴくと細い脚を痙攣させて息絶える様子を観察することに成功した。
 殺戮だなあと、ぼんやり考えた。毒ガス室で裸で殺される人間と、これは、同じ現象だろうか。
 私は自宅の風呂場で、商品ラベルの貼られた缶を片手に、自らを疑似ヒトラーと想定した。